デッドリフトは広背筋になぜ効果的なのか?関節作用から紐解きながら補助的トレーニングも確認していく

デッドリフトは広背筋に効果があるといいますが、肩関節の動きが起こらないデッドリフトで、なぜ広背筋を刺激していけるのか気になったことはありませんか?その謎を紐解いていきます!

デッドリフトは広背筋になぜ効果があるのでしょうか?

筋トレのデッドリフトといえば、大臀筋やハムストリングなど下半身の背面を鍛えるうえで非常に効果が高いとされると同時に、体幹を含め、広背筋や僧帽筋などの筋肉へも効果があるとされます。

しかし、よくよく考えていくと、デッドリフトには肩関節の動作が含まれないため、肩関節の動作を司る広背筋が鍛えられる理由が、よく分からないと思ってしまうこともあるかもしれません。

そこで今回は、なぜデッドリフトが広背筋に効果的なのかについて、デッドリフトに関与する関節の作用を軸にして紐解いていきたいと思います。

はじめに広背筋の特徴や作用、デッドリフトの基礎的な知識をおさらいしてから、それらを踏まえつつデッドリフトが広背筋に効く理由を考えてみましょう。
より広背筋を鍛えやすいデッドリフトのバリエーションや、デッドリフトの効果をあげる広背筋の補助的トレーニング方法もあわせて紹介していきます。

デッドリフトが広背筋に効くのは「アイソメトリックだから」

肩関節の動作もなしにデッドリフトが広背筋を鍛えられる理由は、ひと言でいってしまえばアイソメトリック収縮が起こるためです。

アイソメトリックってなに?という人のためにも、広背筋やデッドリフト自体の動きに着目しつつ、順を追って説明していきましょう。

まずは広背筋についておさらい

デッドリフトがなぜ広背筋に効果があるのかを理解するうえで、まずは広背筋自体について、特徴や主だった作用をおさえておくことが大切です。

広背筋は、背中側の脇下から背中の下部に掛けて、逆三角形に横へ広がる翼のような形をした筋肉。

背中のみならず、人体においてもっとも「面積」が広い筋肉であり、またその体積も550㎤と、人体でトップ10に入る比較的大きな筋肉です。

そして、この広背筋が持つおもな働きには次のようなものがあります。

  • 肩関節伸展
    • 上腕を後方へ真っ直ぐに引く動作
      • ⇒前方に上げた腕をまっすぐ後ろに引く/脇に下ろした腕を真っ直ぐ後方に上げる
  • 肩関節内転
    • 横に開いた上腕を下方へ動かす
      • ⇒横に上げた腕を下方に下げる/脇に下ろした腕を体前面の内側まで振る
  • 肩関節水平外転(水平伸展)
    • 上腕を体に対して水平面に後方へ動かす
  • 肩関節内旋
    • 上腕を回転軸にして、肩を内向きに回す

この4つの主だった作用のなかでも、とくに肩関節伸展、肩関節内転、肩関節水平外転の3つに関して、広背筋はもっとも強く貢献する主力筋です。
そのため、広背筋を筋トレで鍛えるには、これら3つの肩関節作用を起こしていくのが効果的な方法になります。

広背筋が主力筋として作用するこれら3つの肩関節の動作の共通点は、「上半身の引く動き」であるということです。

基本的なデッドリフトのやり方や概要もおさらい

今度は、デッドリフトの基本的なやり方や特徴についておさらいしていきましょう。

デッドリフトの基本的なやり方

デッドリフトの基本的なやり方をおおまかに説明すると次のとおりです。

  1. バーベルを体前面の床に置いて、肩幅程度に両足を開いて立ちます
  2. しゃがんでいき、バーベルを順手で握ります
    1. 目線は正面に向け、胸を張って背すじを伸ばしておきましょう
    2. 上体はおよそ45度に前傾します
    3. お尻は自然な形で下げておきましょう
    4. これがスタートのポジションです
  3. バーベルを持ったまま立ち上がっていきます
    1. バーベルを手の力で引き上げないようにしましょう
    2. 膝を伸ばしていく途中で、バーベルが膝辺りまで来たら、股関節の伸展動作(ヒップヒンジ)を利用してさらに上体を起こしていきます
    3. バーベルは体に引きつけて、スネすれすれを移動するようなイメージで上げていきましょう
  4. その後、ゆっくりと股関節と膝関節を曲げて、バーベルを下ろしていきます

デッドリフトは股関節と膝関節の動きをともなう筋トレである

デッドリフトでは、股関節伸展(太ももが付け根から後方へ動く際に起こる関節動作)と膝関節伸展(膝を伸ばす関節動作)が動的に起こっていくため、2つ以上の関節動作が起こるコンパウンド種目(多関節種目)の筋トレにあたります。

この股関節伸展と膝関節伸展のふたつの関節動作によって、

  • 股関節伸展の主力筋である大臀筋とハムストリングがメインターゲットとなる
  • 膝関節伸展の大腿四頭筋がサブターゲットとなる

ことは理解しやすいのではないでしょうか。

しかし同時に、

  • 背中を縦に走行し、姿勢維持にはたらきかける脊柱起立筋もメインターゲットとなる
  • 肩関節を動かして腕を引くときにはたらく、広背筋や僧帽筋もサブターゲットとなる

とされます。

なぜ、動きに含まれない部位にまで筋トレ効果があるのでしょうか?

デッドリフトが広背筋に効果的な理由は「保つ」または「支える」ため

デッドリフトで広背筋を鍛えられるのは、筋肉を保ったり支えたりするアイソメトリックの効果によるものです。

デッドリフトのやり方のなかでも解説しているとおり、デッドリフトの大切なポイントとして、「背すじを伸ばしておく」ことと「バーベルは体に引きつけておく」という点があります。

この両者は、一見するとまったく異なるようにも思えますが、じつはそれぞれの動作における筋肉の働きは「アイソメトリック収縮」であるという点で共通しています。

このアイソメトリック収縮とは、「筋肉がその長さを変えずに力を発揮し続ける収縮様式」のことで、

動作は起こらないけれども、筋肉は力を出しているという状態を作り出すこと

(引用:石井直方の筋肉まるわかり大事典, p.192)

と言い換えれば分かりやすいかもしれません。

そして、デッドリフトで鍛えられる筋肉群に含まれる、脊柱起立筋、広背筋、僧帽筋の3つの筋肉には、それぞれ以下のようにしてアイソメトリック収縮が起こることになります。

  • 脊柱起立筋
    • 脊柱起立筋は背を反らして上体を後方に曲げる体幹伸展の主力筋
    • デッドリフトでは体幹伸展があまり動的には起こらないものの、動作中に腰を反ったり丸めたりせずに常に一定の姿勢を維持することで体幹伸展の力が必要になり、脊柱起立筋はアイソメトリック状態になる
  • 広背筋
    • 広背筋が作用する腕を引く動作は動的に起こらないが、バーベルが上に上がる際にバーベルを体に引きつけておくためにも、両腕を「引き寄せたまま固定しておく」必要があり、広背筋には高重量のバーベルの負荷が掛かった状態でアイソメトリック収縮が起きる
  • 僧帽筋
    • 僧帽筋は肩甲骨の動きに作用する筋肉で、腕を動かす際には肩関節から先だけが動くのではなく、肩甲骨がその動きの土台として働く
    • 腕を引きつけておく際には、肩甲骨も内転した状態で維持されるようになり、これが肩甲骨内転の主力筋として働く僧帽筋も、アイソメトリック状態でデッドリフトに作用する理由

このようにデッドリフトでは、動的な肩関節の動きはないものの、腕を引きつけてキープするさいに広背筋へのアイソメトリック収縮がおこります。
しかも高重量を扱うこともあって、デッドリフトは比較的大きな刺激を広背筋に伝えることができるのです。

アイソメトリックトレーニングについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

デッドリフトがイマイチ広背筋に効かない!という人はフォーム誤りの可能性もアリ

アイソメトリックである以上、デッドリフトで広背筋に筋肉痛が起こることは少ないですが、それにしてもどうも効いていないぞ…という場合には、フォームが間違っている可能性も考えられます。

広背筋への正しい効かせ方の第一歩は、まずNGフォームを知り、あらためることです。
ついやってしまいがちなNGフォーム例をみていきましょう。

背中が丸まっているのはNG

背中が丸まったフォームでは、広背筋に正しい負荷がかからなくなります。
それ以上に、腰を痛める可能性がある危険なフォームですので、絶対にやめましょう。

バーベルを引き上げていくにつれ背中が丸まってしまう人もいるため、最後まで背筋を伸ばすよう意識してみてください。
ウェイトが重すぎると背中が丸まりやすくなるため、いちど負荷設定を見なおしてみることも重要です。

肩が上がったり前に出過ぎたりしているのはNG

肩が上がってしまったり前に出過ぎるのも、広背筋が鍛えにくくなる典型的な悪いフォームです。

このようなフォームでは、広背筋にかかるべき負荷がほかの筋肉に逃げてしまいます
肩を傷めやすくもなるため、肩はニュートラルな位置を保つことを意識しましょう。

リフトの最後で肩が動いてしまう人は、無理にバーを引き上げようとしている可能性もあるため、ウェイトの見直しを行ってもよいかもしれません。

腕の力で上げるのはNG

腕の力で強引にリフトしてしまうと、広背筋に負荷がかからずNGです。

腕力を使ってデッドリフトを行うと、僧帽筋は鍛えられますが、広背筋には力が伝わりにくくなります。
腕は伸ばしたままトレーニングを行いましょう。

デッドリフトの正しいフォームやNGフォーム例をもっと確認したいという方は、以下リンク先記事をご覧ください。

より広背筋を鍛えやすいデッドリフトのバリエーション

バーベルを使った一般的な床引きデッドリフト(フルレンジデッドリフト)より、もっと広背筋が鍛えやすいデッドリフトのバリエーションも存在します。
どういうものかチェックしていきましょう。

ハーフデッドリフト(トップサイドデッドリフト)

ハーフデッドリフト(トップサイドデッドリフト)は、広背筋を鍛えやすいデッドリフトのひとつです。

パワーラックを起点として行うハーフデッドリフトでは、股関節の曲げ伸ばし動作がほとんど起こらないため、ハムストリングや大臀筋があまり使われません。
そのぶん背中に意識を集中しやすくなり、効率的に広背筋を鍛えやすくなるのです。

またハーフデッドリフトでは、膝下くらいからエクササイズを行うことが多いため、床引きのときより高重量を扱うことができます。
負荷をアップしたぶん、広背筋に対するトレーニング効果も高まります

腰への負担が軽くなるのも、ハーフデッドリフトのよいところです。
ハーフデッドリフトは、腰の痛みが気になる人がトライするにはおすすめのデッドリフトといえるでしょう。

ハーフデッドリフトの詳しいやりかたが知りたい方は、以下リンク先からご確認ください。

ダンベルデッドリフト

デッドリフトにダンベルを使うと、バーベルより広背筋を鍛えやすくなります。

ダンベルデッドリフトは、両手にそれぞれウェイトを持つことで筋肉の可動域を広げたり、動作が不安定になって筋肉に負荷をかけやすくなるため、そのぶん広背筋に効かせやすくなるのです。

肩甲骨の動きに意識を集中しながらダンベルデッドリフトを行うと、より広背筋を刺激しやすくなります。

ダンベルデッドリフトは、自宅でも行いやすく、女性や初心者でも取り組みやすいエクササイズ方法です。

ダンベルデッドリフトのやり方については、下記の記事を参考にしてください。

広背筋をもっと上手く使ってデッドリフトの効果を高めるために補助トレーニングを行ってみよう!

広背筋を鍛える補助トレーニングを実践すると、デッドリフトがより効果的に行えるようになります。

広背筋がしっかり使えればそのぶんデッドリフトの効果を高められるのですが、人によっては、たとえば常にバーを体の近くに引き寄せておけないなど、基本の動作が難しいと感じることもあるかもしれません。

このようになる理由としては、広背筋の使い方を体得してないこともあげられますが、広背筋自体が弱い可能性も考えられます。
これを解決するためにも、広背筋を鍛える補助的なトレーニングを導入してみてもよいでしょう。

補助トレーニングを行う場合には、広背筋が主力筋となる「肩関節伸展」「肩関節水平外転」「肩関節内転」の動きを取り入れた筋トレをおこない、広背筋をまんべんなく鍛えていくのがおすすめです。

具体的には、以下で紹介する筋トレ種目を参考にエクササイズしてみましょう。

肩関節伸展の補助トレーニング

肩関節伸展は、上腕を肩から真っ直ぐ、つまり「縦方向」に後方へ動かしていく関節動作です。

腕を引くさいに上腕を真っ直ぐ後ろに動かしていくには、「脇を閉じて」エクササイズを行うというのがポイントになってきます。

(基本的なワンハンドローイングでは腕は肩関節伸展の動きを起こす)

そこで、具体的な筋トレ種目の例を挙げるとすると、つぎの種目が考えられます。

  • ワンハンドローイング
    • 片手でダンベルを持ち、脇を閉じたまま肘を引いていく
  • ベントオーバーローイング(ナローグリップ気味)
    • 手幅を肩幅かそれよりやや広い程度に開いてバーベルを握り、前傾姿勢を作ったら脇を閉じたまま両肘を引いていく
  • シーテッドローイング(ナローグリップ)
    • 手幅が狭くなるVバーなどをケーブルマシンへ取り付け、脇を締めたままVバーをお腹の方へ引き寄せていく

(Vバーを使ったシーテッドロウでは脇が締まり肩関節伸展が起こる)

上に挙げた例のように、腕を引くさいに脇を締めながら行える筋トレ種目に取り組んでいけば、広背筋を肩関節伸展の動きで鍛えていくことが可能になります。

肩関節水平外転の補助トレーニング

肩関節水平外転は、上腕を体に対して水平面で後方へ動かしていく関節動作であるため、同じ腕を引く動作でも「横方向」への動きといえるでしょう。

横方向へ腕を引く動作を起こすには、「脇を広げて」エクササイズを行うというのがポイントになってきます。

(手幅を広げることで自然と脇も広がるシーテッドローイング)

そのため、具体的に次のような筋トレに取り組んでいくのが効果的です。

  • ベントオーバーローイング(ワイドグリップ気味)
    • 手幅を肩幅の1.5倍程度に広くしてバーベルを握り、前傾姿勢を作ったら脇を開いたまま両肘を引いていく
  • シーテッドローイング(ワイドグリップ)
    • ワイドバーをケーブルマシンへ取り付け、肩幅より広い手幅を取ることで、自然と脇が開いた状態で腕を引ける

手幅を広くとった状態で、体の正面へ向けて腕を引いていけば、自然と脇を広げたままになり、肩関節水平外転を効果的に実現できるようになります。

肩関節内転の補助トレーニング

横に開いた上腕を下方へ動かす肩関節内転は、上腕が体に対して前方から後方へ動く他のふたつの肩関節動作と違い、上腕が上方から下方へ動く動作であると考えると、多少イメージがしやすいかもしれません。

肩関節内転の動きで広背筋を鍛えていくには、基本的に「手幅を広げて伸ばした腕(上腕は斜め横向きに開く)を下方へ引いていく」という動作を含む筋トレに取り組んでいくのが効果的になります。

(懸垂で体を引き上げると体の横側を弧を描く様に上腕が下方へ引かれる)

具体的には、つぎのようなエクササイズが有効です。

  • 懸垂
    • 手幅を肩幅の1.5倍程度に広くしてバーベルを握り、体を引き上げていくことで、斜め横に開いた上腕は下方へ引かれていく
  • ラットプルダウン
    • 手幅を肩幅の1.5倍程度に広くしてバーベルを握り、バーを引き下げていくことで、 斜め横に開いた上腕は下方へ引かれていく

(ラットプルダウンでも懸垂と同じ動きで上腕が引かれていく)

広背筋を肩関節内転の動作で鍛えていくときには、このように基本的には懸垂と同じ動きを起こすと考えて取り組んでいくとよいでしょう。

広背筋へ効かせるにはリストストラップも検討してみるといいよ!

次のデッドリフトの記事も効果を高める為には読むべき!

デッドリフトは広背筋になぜ効果的なのか?関節作用から紐解きながら補助的トレーニングも確認していくのまとめ

デッドリフトで広背筋が鍛えられる理由は、アイソメトリックトレーニングにあたるためです。

このメカニズムの解説とあわせて、広背筋を鍛えやすいデッドリフトのバリエーションや、エクササイズ効果をアップするための補助トレーニングなどについても紹介してきました。

まずは正しいフォームをおさえつつ、効果的に広背筋を鍛えましょう。

デッドリフトで広背筋をしっかりと働かせるためのワンポイントアドバイスとしては、バーを引き寄せる前に、上背部全体をできる限りしっかりと緊張させることです。
その緊張状態を保つように意識しながらトレーニングを行っていくと、上手く広背筋も使っていけるかと思うので参考にしてみてください!

筋トレキャンプでした!

この記事を書いたのはこの人
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