速筋(白筋)の鍛え方やトレーニング方法を知っておけば、多くのスポーツで発揮できる力を高めていくことが可能。そして、筋肉を大きくしたいと筋トレを頑張っている人にも大切です。
速筋の鍛え方を知りたいという人は多いはず。
速筋(白筋)と言えば、瞬発力だったりパワーだったり、さらには大きな筋肉が欲しいといった場合に大切になってくる筋肉です。
速筋を鍛えておくことで、スポーツでのパフォーマンスを高めるのはもちろんのこと、ボディビルやボディメイキングにおいてさえも大切だと言えます。
現在筋トレをやっている人の中のほとんどが、この速筋を鍛えたいと思って頑張っているのではないかと思います。
そこで、その速筋を効率よくトレーニングしていくためにも、速筋の鍛え方についてのポイントを紹介していきます。
ただし、速筋についての簡単な知識があった方が理解しやすいと思うので、まずは速筋の簡単なおさらいから見ていきましょう。
速筋(白筋)についてのおさらい
(中央と右が速筋)
すでに知っている人もいるかと思いますが、筋繊維のタイプは、大きく分けると二つの種類に分けることが出来ます。
一つはマラソンなどの長時間、低〜中負荷で運動をし続けるために必要な、持久力を司る遅筋。小さな力ではありますが、持続的に発揮出来る特徴があります。別名赤筋とも言われる筋肉です。
そして、もう一つが今回の主役である速筋。
瞬発力やパワーを必要とする運動を司る筋肉ですね。肉眼的には白っぽい色をしている(赤色の原因となるミオグロビンやチトクロームのようなタンパク質が少ないため)ため、白筋と呼ばれることもあります。
そして、この速筋。細かく見ると、次の通りさらに二つのタイプに分かれます。
タイプ2a(酸素&糖を使う速筋)
- ミトコンドリアの数がそれなりにある
- ミオグロビンとチトクロームの数がそれなりにある(ピンク色に見える)
- 収縮スピードは早い
- 大きな力を発揮出来る
- 脂肪と糖の両方をエネルギーとして使用する
- スタミナがそこそこあり、疲労回復もそれなりに早い
- 速攻、反復、軽度の運動に向いている
- ボディービルダーはこのタイプの筋肉が多い
- 筋肥大に重要な役割を担う
タイプ2b(酸素を使わない速筋)
- ミトコンドリアが少ない
- ミオグロビンとチトクロームの数が少ない(白色に見える)
- 収縮スピードはとても早い
- とても大きな力を発揮出来る
- スタミナがない(すぐに疲れてしまう)
- パワーリフティングのような瞬発力、最大筋力の発揮が求められる競技に向いている
▶︎筋繊維タイプの種類(速筋と遅筋)を比較|白筋と赤筋の特徴とは?
運動競技における速筋の役割
タイプ2、つまり速筋の筋繊維は瞬間的に大きな力を発揮したり、素早く大きなパワーを出していく運動に関わります。
例えば、フィールド競技(砲丸投げや高跳びなど)に加えて、長時間ゆっくり反復する動きを必要としない運動(例えば柔道やラグビーなど。一般的な競技では同じ動作をゆっくりと反復することはない)であれば、この速筋を鍛えることが一番効果的です。
このタイプの速筋をつければ、より大きな力をつけることができます。そうすることで短距離走や重量挙げ、高跳び、瞬間的なパンチ力やキック力でもよい記録やパフォーマンスを出すことができます。
人によって速筋の割合は変わる
体格は人によって千差万別ですよね?骨格もホルモン量も皆違っています。それは筋肉に関しても同じこと。
長距離に向いている人もいれば、瞬発的な力をうまく発揮できる人もいるし、その中間の人だっています。
つまり、生まれながらにして持っている速筋や遅筋繊維の割合は決まっているということ。残念ながら現在のところ、遅筋繊維を速筋繊維へ変えるのは出来ないと言われています(速筋繊維を遅筋繊維へ変えることは可能性として示唆されている)。
しかし、それでもよっぽど世界トップレベルの瞬発力系アスリートを目指さない限り心配無用。
速筋は遅筋と違って、正しい鍛え方をすれば太くすることが出来るので、筋繊維の本数ではなく体積であれば割合を増やしていくことが可能なのです。その結果、しっかりと瞬発力やパワーを高めていくことが出来るようになります。
速筋の鍛え方のポイント
さて、速筋について理解が深まったところで、今回の本題である速筋(白筋)の鍛え方についてみていきましょう。
速筋は正しいポイントをおさえてトレーニングすることで、太く、そしてより大きなパワーを発揮していくことが出来ます。
次のポイントを押さえながらトレーニングをしてみましょう。
速筋の鍛え方① 高負荷(重い重量)でトレーニングをする
どの筋繊維が使われていくかは、負荷の程度によって決まってきます。トレーニングの中で筋肉にかかる負荷がそこまでない場合、基本的に遅筋のみが働くことになります。
しかし、高負荷(重い重量)が筋肉に掛かった場合、その大きな圧力へ抵抗するため、大きな力を発揮していく必要があり、その時になって初めて速筋が働き始めます。
つまり、負荷が高くなればなるほど、速筋の関与も高くなるということになり、速筋を筋トレでトレーニングしたい場合は、最大で反復出来る回数を12回以下に抑えた負荷でトレーニングすることが最も効果的だと言われています。
▶︎筋トレとレップ数:目的別の適切なレップ数とは?
その中でもさらに細かく見ると、次のように分けることが出来ます。
- タイプ2a
- 6~12レップの範囲で挙上できる負荷
- 67%~85%/1RM(※1RMは一回しか挙げられない重さ:最大筋力)
- タイプ2b
- 1~6レップの範囲で挙上できる負荷
- 85%~100%/1RM
このように、速筋の鍛え方の大切なポイントの一つが、適切な負荷でトレーニングするということなのです。
速筋の鍛え方② 動作スピードを高めて速筋を活発化
物理の簡単な式で、
荷重=質量×加速度(F=M×A)
という公式を見たことありますか?
この物理の公式は、実は筋トレにおいて、速筋を働かせるための簡単な原理でもあります。
この「荷重」の部分が、筋肉にかかる負荷ということ。そうすると、扱う重量が「質量」。そして、もう一つ重要なのが、その「加速度」。つまりウェイトを挙上する時のスピードになります。
この物理の原理を筋トレに当てはめたCompensatory Acceleration Training(CAT)というものがありますが、これは簡単に言ってしまえば、比較的軽めの負荷を扱う代わりに挙上を目一杯素早く行うといったトレーニング。
CATの筋トレでは、通常、最大筋力の65%前後(人によってはもっと軽い負荷や重い負荷で行う場合もある)で持ち上げられる重量を使って、とにかく素早く「ドカンドカン」といった感じで挙上を繰り返していきます。
そうすることで、上の公式にある加速度の数値が高まり、「荷重」の部分も大きくなるため、筋肉にかかる負荷が大きくなり、速筋が働いていくことになるのです。
速筋の鍛え方③ エキセントリック(ネガティブ動作)
筋トレでウェイトを挙上する動作には、コンセントリック(ポジティブ動作)とエキセントリック(ネガティブ動作)があります。
ダンベルカールで言えば、ダンベルを上げる動作がコンセントリックで、下げる動作がエキセントリックですね。
この動作のうち、実はエキセントリック(筋肉が伸びていく動作)の方が、発揮出来る力は圧倒的に大きい(一般的にはおよそ1.6倍と言われる)と言われています。
さらに、エキセントリックを強調したトレーニングの方が、筋繊維も傷つきやすかったり、筋肉痛が起こりやすかったりするため、その後の回復時間をしっかり当てることが出来れば、より筋肉の成長を引き起こして、筋肉のサイズを太くしやすいとも言われているのです。
つまり、速筋の鍛え方のコツの一つとして、エキセントリックの動作では、コンセントリックよりゆっくりと行い、速筋へより大きな緊張と負荷を掛けていくというのがトレーニングのポイントになってくるのです。
速筋の鍛え方④ プライオメトリクス
プライオメトリクスとは、昔はジャンプトレーニングと呼ばれていたこともあるトレーニング方法。
例えば、ホップしたりスキップしたり、他にもジャンピングスクワットやボックスジャンプのようなものをイメージすると分かりやすいかもしれません。
このプライオメトリクスは、筋肉を収縮して伸展させるという「伸縮動作」を短時間の間に素早く繰り返していくことで筋肉の伸縮速度を高め、神経系と筋繊維との連携を強化し、発揮出来る力を高めていくというトレーニング方法。
このプライオメトリクスの動作の中では、「素早く」動作を行う、つまり瞬発的な動作を繰り返していくことになり、その中で速筋が大きく貢献していくことになります。
また、ボックスジャンプなどの場合は、床に着地する際にも、体へ急激に大きな力がかかることになり、その圧力に耐えるために速筋繊維が優先的に使われていくようになります。
速筋の鍛え方⑤ 意識の力を使う
実は速筋をトレーニングする時には、意識の力も大切になってきます。
例えば、自分にとって最大筋力に近い負荷でベンチプレスをやろうと思った時、集中していない場合は挙上出来なくても、意識をトレーニングへ集中していくことで、ウェイトを上げていくことが出来るかと思います。
これが、遅筋と速筋の違い。
遅筋は少しの刺激でもすぐに働くため、特に強く意識することなく動かすことが出来ますが、速筋は、徐々に負荷が高まるといった条件でない限り、基本的には意識的に準備しておかないと、不意を突かれたように直ぐには対応出来ないといったことが起こります。
詳しくは、遅筋の鍛え方とトレーニング方法|赤筋についての体系的な理解を基に考えるも確認してみましょう。
速筋のトレーニングメニュー例
速筋の鍛え方を考える際に大切なポイントを見てきましたが、最後に速筋のトレーニングメニューとして具体例を挙げておきます。
速筋のトレーニング方法具体例① 全身の速筋を使いながら筋力アップを目指す
ハイクリーンというウェイトリフティングの練習に用いられるトレーニングを利用して、全身の速筋を鍛えていきましょう。
ハイクリーンは、爆発的な瞬発力と同時に、全身の筋力も必要になってくるため、速筋を鍛える方法としては優れた筋トレ種目になります。
- 床にバーベルを置きましょう
- 背筋を伸ばした状態を維持してしゃがみ、バーベルを掴みます
- 立ち上がりながらその反動を使い、バーベルを体のラインに沿わせて引き上げていきます
- 胸まで引き上げたら素早く手首を返し、顔の前あたりまで更に上げ、鎖骨のあたりで支えます
このハイクリーンを1セット4~6レップで、1~5セット行っていきましょう。セット間の休憩時間は1分半から3分程度にしておきます。
速筋のトレーニング方法具体例② 高負荷とスピードをミックス
この速筋のトレーニング方法は、速筋の鍛え方として効果的である、1)高負荷と2)スピード、それぞれの側面から、同じ筋トレ種目を二つの形で行っていくトレーニングです。
- 最大筋力の85%~95%で筋トレをして
- その後に同じ種目で瞬発的なスピードトレーニングをする
ベンチプレスでトレーニングすると考えた場合、次のような感じになります。
- 85%~95%/1RMのトレーニング
- ベンチプレスを2~6レップ行う
- これを3セット繰り返す
- セット間の休みは2~3分
- 65%/1RMのトレーニング
- ベンチプレスを素早く15回繰り返す
- 2セット行う
- セット間の休みは1分半
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速筋の鍛え方とトレーニング方法|白筋を鍛えて瞬発力&筋肉を大きくする!のまとめ
速筋の鍛え方とトレーニング方法を見てきました。
白筋と言われる速筋を鍛えていくことは、大きな力を出したり、筋肉を大きくするために大切。
今回紹介した鍛え方のポイントを参考にして、速筋をトレーニングしていきましょう!
筋トレキャンプでした!