股関節屈曲と関与する筋肉について理解を深めていくことは、健康に生活を送るためにも役立つかもしれません。おすすめなストレッチや筋トレ方法を含め、知識を深めていきましょう。
股関節の屈曲とその動きに関与する筋肉は、日常生活からスポーツに至るまで、多くの場面においてとても大切。
股関節屈曲が問題なく出来ることは、健康な人生を送っていくためにも重要な要素になってきます。
しかし、その股関節の屈曲について、具体的にどのような動きを指し、そこに関わる筋肉とはどのようなものかまで、しっかりと理解していますか?
今回は、股関節屈曲について、その動作の解説から、股関節屈筋群と呼ばれる複数の筋肉の紹介、さらにおすすめなストレッチ方法や筋トレ方法までを紹介していきます。
股関節の屈曲とは?
股関節の屈曲とは、「脚を付け根から前方に振る」または「脚を前方に振って太ももを持ち上げる」動作。
日常生活においては、歩行したり階段を上ったりする際に、太ももを前に送り出したり、太ももを上げたりする動きを指すことになります。
また、スポーツにおいては、ランニングやダッシュ時における脚の前方への振りや、サッカーでボールを蹴る際の太ももを大きく前に振る動作なども、この股関節の屈曲動作にあたります。
さらに、脚を前に振る動作だけではなく、脚を固定した状態から上体を曲げる腹筋運動のような動作にも、股関節の屈曲が含まれることになります。
股関節の屈曲に貢献する筋肉
股関節の屈曲に貢献する筋肉群を、「股関節屈筋群」として考えていった場合、そこには次の複数の筋肉が含まれることになります。
股関節屈曲の貢献度トップ6
- 大腰筋と小腰筋(※注)
- 腸骨筋
- 大腿直筋
- 大腿筋膜張筋
- 恥骨筋
- 長内転筋
「※(注釈)小腰筋は、大腰筋から別れた分束であり、人によっては持っていないこともあるため、基本的にはあまり考慮する必要はない。」
それ以外に股関節の屈曲に関与している筋肉群
- 縫工筋
- 短内転筋
- 薄筋
これらの筋肉の中には、主な働きが股関節の屈曲ではない筋肉も多く含まれるため、本来であれば股関節屈筋群と呼ぶのではなく、理想的には各筋肉の名称で呼ぶべき。
ただし、股関節の屈曲に関わる筋肉全体を便宜上指すためにも、呼称として「股関節屈筋群」とまとめられることが一般的です。
ちなみに、この股関節屈筋群の中でも、最も貢献度の高い二つの筋肉(大腰筋と腸骨筋)は、まとめて「腸腰筋」と呼ばれています。
股関節の屈曲に関わる筋肉を主な働きごとに分けた場合
上で紹介した股関節屈筋群に含まれる筋肉を、それぞれが主に関与する動作ごとに分けると、次のように分類することも可能。
- 股関節の屈曲(脚を付け根から前に振る)
- 大腰筋
- 腸骨筋
- 縫工筋
- 膝関節の伸展(膝を伸ばす)
- 大腿直筋
- 股関節の外転(脚を付け根から外側に開く)
- 大腿筋膜張筋
- 股関節の内転(脚を付け根から内側に動かす)
- 長内転筋
- 短内転筋
- 薄筋
- 股関節の内旋(脚を付け根から内向きに捻る)
- 恥骨筋
このように、股関節の屈曲の筋肉について見ていった場合、股関節の屈曲を主な役割としている「純粋な」股関節屈筋群は、腸腰筋(大腰筋&腸骨筋)と縫工筋のみであり、それ以外に、本来は別な働きを主とする様々な筋肉が関わっていることが分かります。
股関節屈筋群が弱くなってしまうと?
股関節の屈曲動作が上手くいかない場合、それは大抵、腸腰筋(大腰筋と腸骨筋)が何かしらの原因で弱ってしまったり、硬くなってしまうことで起こってくることになります。
というのも、股関節の屈曲動作においては、上でも示した通り、この腸腰筋の貢献度というのは最も強力で圧倒的なウェイトを占めており、さらに純粋な股関節屈筋であるから。
そして、腸腰筋が弱ってしまうと、それを補おうと、本来の主たる役割が股関節屈曲ではない他の股関節屈筋群や、それ以外にも下背部にある筋肉に大きな負担がかかり、腰痛や骨盤の歪みなどを引き起こしてしまうことにもなりかねない。
特に、骨盤は立ち居での姿勢の安定や運動パフォーマンスの基盤にもなる支持機構として大切な役割を持つため、日常生活が困難になったり、もちろんスポーツでのパフォーマンスが低下してしまうなんてことも考えられます。
そのため、股関節の屈曲の筋肉群の中でも、大腰筋と腸骨筋の二つを中心にケアしていくというのが、股関節の屈曲動作を健全にしておき、健康に過ごすためのカギになってきます。
さて、ちょっとここで、次の手順で股関節の屈曲動作に問題がないか確認してみましょう。
- 足を腰幅に開いて直立します
- 股関節を曲げて、片脚を膝を曲げながら上げていきます
- その片脚を両手で抱きかかえて胸まで持ち上げていきます
- その後、両手を離してみましょう
もしも、両手を離しても、その後、片膝を90度以上に曲げた状態で維持出来るのであれば、股関節の屈曲に関しては問題無し。
逆に、90度以上に保てない場合や、保とうとする場合に背中が反り返ってしまったり、股関節の筋肉が痙攣してしまうなどといった場合、股関節屈筋群が弱っている可能性大。
改善するためにも、次に紹介していくストレッチや筋トレ方法を取り入れてみましょう。
股関節の屈曲筋のストレッチ
上に挙げた通り、股関節の屈曲動作に関わる筋肉(特に腸腰筋)をケアしていくことは、運動能力の低下を招かないためにも大切。
そこで、まずは股関節の屈曲に関わる筋肉を、ストレッチを通してケアしていく方法を確認していきましょう。
ちなみに、股関節屈筋群をストレッチしていく場合、股関節の屈曲とは逆の動きを行って伸ばしていくのが基本となります。
股関節の屈曲筋ストレッチ① 基本的な方法
この股関節の屈曲ストレッチは、前後に伸ばした脚のうち、後ろ脚を思い切り後方へ伸ばしていくことで、後ろ脚の付け根前面にある腸腰筋を中心に、その他の股関節屈筋群もストレッチしていく方法。
通常であれば場所を問わず行え、また器具も必要ないので、基本的な股関節の屈曲筋ストレッチとして覚えておくととても便利。
- 両脚を前後に開きます
- 後ろ脚を思い切り後ろへ伸ばしていきます
- 後ろ脚の膝が地面に着くまで伸ばしていきましょう
- 背筋は伸ばしたまま、腰を前方に押し出しながら体を沈めていきます
- 両手は前脚の膝に乗せてバランスを取るようにすると良いでしょう
- 後ろ脚の付け根の前面部分がストレッチされたところで30秒程度維持します
- 逆側も同じように行っていきましょう
股関節の屈曲筋ストレッチ② 椅子を利用した方法
この股関節の屈曲筋ストレッチは、椅子を利用して股関節屈筋群を伸ばしていく方法。
特に、股関節を曲げたまま長時間デスクワークに励む人などは、普段座っている椅子を利用して、この股関節の屈曲筋ストレッチに取り組んでおくと良いかも。
- 両脚を前後に開き、後ろ脚の膝を椅子に乗せます
- バランスを取るために背もたれを握っておくと良いでしょう
- 後ろ脚をさらに後ろへ移動させると、その分効果は高くなります
- 背筋を伸ばしたまま、腰を前方に押し出すようにして体を沈めていきます
- この時、後ろ脚付け根の前面部分を伸ばしていくように意識しましょう
- 後ろ脚付け根の股関節屈曲筋群がストレッチしたところで30秒程度維持します
- 逆側も同じように繰り返していきましょう
股関節の屈曲筋ストレッチ③ 上級者編(鳩のポーズ)
股関節の屈曲筋をさらにストレッチさせていきたいなら、この鳩のポーズを試して見ると良いかも。
鳩のポーズはヨガのポーズの一つであり、行うには相応の柔軟性が必要。
さらに、出来ればヨガマットなどの上で行う方が良いので、気軽に行うのはちょっと難しいかもしれません。
しかし、後ろへ伸ばした脚の股関節屈曲筋のストレッチはもとより、前の脚を外旋位で伸ばしていくことになり、前に出した脚の股関節の屈曲にも関わる股関節内転筋・内旋筋群もしっかりと伸ばしていくことになります。
そのため、股関節屈曲に関わる筋肉を全体的にストレッチするためにもおすすめ。
- 両脚を前後に開いていきます
- 前の膝は内側へ曲げて太ももを外旋位にします
- 後ろ脚は伸ばしたまま出来る限り後ろへ伸ばしていきます
- 上体は前に向けるようにして胸を張り、腰を下げていくようにします
- バランスを取るために体の両サイドに手を添えておきましょう
- 左右の腰の高さが同じになるように注意してください
- 後ろ脚の付け根と前脚の内もものストレッチを感じながら30秒程度維持します
- 逆側も同じように繰り返していきましょう
股関節の屈曲の筋肉トレーニング
股関節の屈曲に関わる筋肉のストレッチ方法を紹介してきましたが、次に、股関節屈曲の筋肉トレーニングについても紹介しておきます。
股関節屈筋群を強化するためにも、参考にしておいてください。
股関節の屈曲筋トレ① レッグレイズ
レッグレイズは、仰向けに上半身を固定した状態で股関節の屈曲をし、両脚を上げていく筋トレ種目。
自分の両脚の重さを負荷にして股関節の屈曲を行い、腸腰筋を中心に、他の股関節屈筋群の中でも特に大腿直筋へ大きな刺激が入ることになります。
また、動作の中では、お腹の前面にある腹直筋の下部も関与していくことになります。
- 両足を伸ばして仰向けに寝ます
- おへそを背骨につけるようなイメージで床に背中をつけましょう
- 両足を伸ばしたまま床から浮かしていきます
- 90度手前まで上げていきましょう(90度を超えると腸腰筋への負荷が抜けます)
- そしてゆっくりと下ろします
- 8~15回を目安に繰り返していきます
股関節の屈曲筋トレ② ハンギングレッグレイズ
ハンギングレッグレイズは、レッグレイズの動きをぶら下がった状態で行う筋トレ種目。
レッグレイズと基本的には同じ筋肉が鍛えられますが、より負荷が大きいのが特徴。
さらに、仰向けになって行うレッグレイズでは、脚が垂直以上(90度以上)になると腸腰筋への負荷が抜けてしまうのに対して、このハンギングレッグレイズでは負荷が抜けないのが特徴。
股関節の屈曲に関わる筋肉をさらに強化したいなら、取り組んでおきたいトレーニング方法だと思います。
- バーにぶら下がります
- 両脚を伸ばしたまま股関節を動かして、床に水平になるまで上げていきます
- 両脚は揃えたまま行って行きましょう
- 可能なら水平より高く上げても問題ありません
- その後、ゆっくりと両脚を元の状態に戻していきます
また、もしも両脚を伸ばして行うのが難しい場合は、両膝を曲げた状態で股関節の屈曲動作を行うハンギングニーレイズを代わりに行ってみましょう。
股関節の屈曲筋トレ③ ケーブルヒップフレクション
股関節屈筋群を、自重だけではなく、さらに重いウェイトを利用して鍛えていきたいなら、ジムなどに置いてあるケーブルマシンを利用して行うケーブルヒップフレクションに取り組んでみると良いかも。
大きな負荷が掛かった状態で、脚を前方へ振っていく動作を行うことで、腸腰筋を中心に、股関節の屈曲に関わる全ての筋肉を使っていくことになり、筋肉増強といった点においては大きな効果を期待出来るかと思います。
- ロープーリー(下側のケーブル)に足首ストラップを付けて、足首に装着します
- ケーブルマシンとは逆向きになって立ちます
- 足首ストラップを装着した脚を伸ばしたまま、前方へ振っていきます
- 負荷に耐えながらゆっくりと脚を戻していき、繰り返していきます
股関節の屈曲筋トレ④ ベントニー・チューブヒップフレクション
ケーブルを利用する代わりに、トレーニングチューブ(またはレジスタンスバンド)を利用して股関節屈曲を行い、関与する筋肉を鍛えていくのもおすすめ。
このベントニー・チューブヒップフレクションであれば、出張先や旅先に気軽にトレーニングチューブを持参して、股関節の屈筋群を鍛えていくことが可能になります。
さらに、ケーブルマシンを利用するほどの筋力がないといった人も、このトレーニングチューブを利用した筋トレであれば、問題なく始められるはず。
また、膝を曲げた状態で股関節の屈曲動作を行っていくため、膝を伸ばす大腿四頭筋に自身がない人にもおすすめ。
- トレーニングチューブを低い位置に固定します
- そのチューブを足首に巻きつけます
- チューブが固定された場所とは逆側を向いて立ちます
- チューブを付けた脚を、付け根から前方へ上げていきます
- この時、膝は自然と曲がっていくようにして、太ももが床と平行になる程度まで上げていきましょう
- 負荷に耐えながらゆっくりと脚を戻していき、繰り返していきます
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股関節屈曲と筋肉|股関節屈筋群のストレッチ方法や筋トレ方法なども紹介!のまとめ
股関節屈曲と、それに関わる筋肉を中心に、他にもストレッチや筋トレ方法を見てきました。
股関節屈曲はとても重要な動作です。
この動作に関与する筋肉について知っておき、思い出したらケアしておくようにすると良さそうです!
筋トレキャンプでした!