「ミオスタチン」ってご存じですか?実はこれ、筋トレをやっている人にとってはとても大切で気に留めておくものなんです。
このミオスタチンは、タンパク質の一種で、なんと筋肉の成長を抑制する作用があると言われています。つまり、このミオスタチンがなければ、筋肉は無限に発達していくということになります。
しかも、このミオスタチン、生まれつき少ない人もいるとか何とか・・・。(元々ミオスタチンが少ない場合は、筋肉の成長を抑制する力が弱くなるので、トレーニングした後の筋肉がつきやすいってことなんですかね?)
これは、いつも必死に筋トレをしている私たちにとっては気になる情報です。そこで今回は、このミオスタチンについて、さらには、ミオスタチン関連筋肉肥大という、遺伝子が引き起こす筋肉への作用を紹介していきます。
ミオスタチンの働きを理解できれば、筋トレにおいても有効かもしれないので、まずは確認してみましょう。
ミオスタチンとは?
ミオスタチンは筋線維から分泌されるタンパク質の一種で、筋肉の成長を抑制する作用があり、このミオスタチンが生成されなかったり、筋肉に受容されなかった場合、逆に、筋肉が急激に成長していくことになります。
この働きから「ミオスタチンは筋肉の成長を邪魔する」と認識されることがありますが、正確には、筋肉の発達を正常に保っていると言った方が良いでしょう。
筋肉の成長には、筋トレと栄養摂取・休息に加えて体内のホルモンのバランスも重要な役割を担っています。代表的な物に、アナボリックホルモンと呼ばれるテストステロン、成長ホルモン、インスリンなどがありますが、これらのホルモンは主に、筋トレによって損傷した筋肉を回復させ、より強い筋肉を作り上げるという役割があります。
しかし、私達の体は常に「バランス」をとるようにできており、トレーニングと栄養摂取が適切に行われていても疲労やオーバーワーク、ストレスによって筋肉が失われてしまう場合があります。この筋肉の成長を阻害する物質が、ミオスタチンです。
例えば、筋肉の元になる筋サテライト細胞というものがあるのですが、その細胞がとめどなく増えすぎてしまうと、異常に筋肉が太くなりすぎたりしてしまいます。さらに、細胞の分裂に異常をきたした時は、異常な細胞(つまりガン)が再現なく増殖してしまうことになりかねません。
ミオスタチンの筋肉成長阻害効果とは?
疲労やストレス、長時間の運動や、エネルギー不足などの影響で筋肉が分解されてしまう状態を状態を「カタボリズム」といいます。筋トレをしている方であればこの「カタボリズム」や「カタボリック」という言葉を耳にされたことがあるかと思います。
この、カタボリズムの抑制ができれば、私たちの筋肉は筋トレや栄養補給によって無制限に発達していくことになりますが、ミオスタチンはこのカタボリズムに関与し、筋肉の成長を阻害する効果があります。
例えば、筋トレをストイックにしても、なかなか、筋肉が発達しない人もいれば、たった1,2年、もしかしたら数ヶ月で筋肉を急激に増加させる人もいます。
この差には当然、筋トレの質なども大きく関与していますが、なかなか筋肉が発達しない人は、体内のミオスタチンのレベルが高いということが研究によってわかってきています。
ミオスタチン関連筋肉肥大とは?
ミオスタチンによるカタボリックの影響は非常に大きいため、先天的にミオスタチンが欠如している動物は「ダブルマッスル」という状態になり、通常の筋肉量よりも圧倒的にに多くの筋肉に覆われた身体を持ちます。
一例をあげると、ベルギー原産のベルジャンブル―(牛)、ブリーウィペット(犬)は生まれつきミオスタチンが欠如していて、これらはまるでアニメのように、ほかの種類の動物とは比較にならないほど、筋肉が隆起しています。
この、ミオスタチン関連筋肉肥大は、人間も例外ではなく、ミオスタチンが生まれつき欠如している人もいます。(つまり超人的な肉体を持った人もいるということですね!)
その例が、米国ミシガン州ルーズベルト・パークにリアム・フックストラちゃんという、男の子です。
彼の体重は1歳の時で10キロほど。これは米国の標準を下回っています。しかし、彼の体には脂肪がほとんどなく、その代わり、筋肉が普通の子供より40パーセントも多かったのです。腹筋は見事に割れ、そして、その肉体は驚くべき強靭さを持ち、常識破りな運動能力を持っています。
このリアムちゃんの話は実話で、医学的には、「ミオスタチン関連筋肉肥大」(myostatin-related muscle hypertrophy)と診断されています。そのような強靭な体ができ上がったのは、ミオスタチン関連筋肉肥大によるものなのです。
ミオスタチン関連筋肉肥大の原因の仮説とは?
遺伝子変異によるもの
ミオスタチン関連筋肉肥大の原因の仮説の1つとして言われているものが、遺伝子変異によるものです。
私達の体や性格など、多くの要素は、この遺伝子によって先天的に影響されますが、その遺伝子に何かしらの異常があり、それにより、体質やかかりやすい病気が変わるとも言われています。
その中に、極稀にミオスタチンを作り出す遺伝子が変異している人がいます。医学文献によれば、この遺伝変異を有する人は、筋量が通常の2倍にまで達する可能性があります。この他、摂取カロリーが急速に代謝され、体脂肪がほとんど蓄積されない体質も持ち合わせていると言われています。
遺伝子の突然変異が起こる確率は1/40000と言われており、世界75億人の中に、実際に何人もミオスタチン関連筋肉肥大を持った人はいると思われます。実際周りも、本人も気づいていないだけということが多くあるのではないでしょうか?
筋細胞のミオスタチン拒否によるもの
ミオスタチン関連筋肉肥大の原因の仮説のもう1つが、筋細胞のミオスタチン受容拒否によるものです。
これはどういうことかと言うと、体内でミオスタチンが生成されていても、筋細胞がミオスタチンを受容しないという人が極稀におり、このタイプの人は、筋量が通常の1.5倍にまで達する可能性があると言われています。
この他、先述の遺伝子異常によるタイプと同じく、摂取カロリーが急速に代謝され、体脂肪がほとんど蓄積されないと言われています。先に紹介したリアムちゃんは、遺伝子の異常ではなく、このように筋肉がミオスタチンを受容しないタイプであることが確認されています。
普通の人でもミオスタチンを抑えて筋肉を付けやすくすることは可能?
これらのことから、ミオスタチンの分泌が抑えられれば筋肥大がしやすくなると言えることがわかりますが、後天的にミオスタチンの分泌を抑える方法で、確かな証拠があるものはまだ明確に発表されておらず、研究が続いています。
現在では、普通の人でもミオスタチンを抑えられる可能性がある方法として、以下のようなものが挙げられています。
ミオスタチンの抑制には筋トレが効果的
強度の高い筋トレやその他の運動など、外部から激しい刺激を筋肉に与えると、ミオスタチンを減らす効果があると言われています。
実際にマウスの実験では、約2/3までミオスタチンが減ったという研究結果も出ています。そして、激しいトレーニングで筋肉を刺激すると、ミオスタチン・アンタゴニストという、ミオスタチンの働きを阻むタンパク質が増える可能性も示唆されています。
しかし、別の発表では、「エクササイズによってミオスタチンを減らしても、筋肉の成長には関係ない」ということも言われており、明確な結論は出ていません。ですが、トレーニングをするとミオスタチンの発現が減るとする意見の方が、優勢になりつつあります。
クレアチンはミオスタチン抑制に効果があるかも
ある実験では、27名の人間に8週間ほどクレアチンの摂取と筋トレをさせた所、ミオスタチンレベルが17%下がり、筋肉量もアップしたと発表されています。
こちらも明確な結論は出ていませんが、実験結果を参考にすると、クレアチンを摂取し続けることで、ミオスタチンレベルを低下させることができるかもしれません。
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ミオスタチン関連筋肉肥大は筋肉が大きくなる遺伝子の変異?のまとめ
ミオスタチン関連筋肉肥大の研究は、筋ジストロフィーや骨粗しょう症など、消耗性疾患(体力の消耗が著しい病気のこと)の新しい治療法の発見につながるのではないかと期待されています。
勿論、スポーツ界からも注目を浴びつつあり、オリンピック選手の中にも気づかないだけで、実はミオスタチン関連筋肉肥大の人間が多いかもしれません。
こういう先天的なものもありますが、筋トレは正しい方法でやれば、ちゃんと成果は出ますよ。筋トレをすれば、恐らくミオスタチンを抑制することは可能になってくると思います。トレーニングを頑張って、筋肉を大きくしていきましょう!
筋トレキャンプでした!