サイズの原理と運動単位|筋肉の活動は大きさの順番に左右されている?

サイズの原理と運動単位について見ていきます。筋肉の活動に関して理解を深めたいなら知っておきたい、「大きさ」と「順番」が鍵になる知識です。

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サイズの原理と運動単位という言葉を聞いことはありますか?

筋肉が力を発揮する時、そこには「サイズの原理」が働いており、これは、スムーズな動作を起こしたり、エネルギー効率を良くしていくためにも大切な働きになります。

一方で、サイズの原理には例外も存在し、その例外を応用していくことで、筋トレなどのトレーニング効率を高めていくことが可能です。

今回は、筋肉に関してもっと知識を深めたいなら知っておきたいサイズの原理と、そのサイズの原理を理解する上で非常に大切な運動単位について見ていきます。

まずは、運動単位の説明から始め、その後にサイズの原理、最後にサイズの原理の例外という順番で確認していきましょう。

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サイズの原理を理解するために運動単位を確認しよう

サイズの原理を理解していくためには、「運動単位」について知らなくてはいけません。

そこでまず、その運動単位について確認していくことから始めていきます。

運動単位とは?

人間の脊髄には運動神経が存在しており、この運動神経(運動ニューロン)は枝分かれするように伸び、筋肉の細胞である筋線維につながっています。

この時、一つの運動神経は、それが支配する複数の筋線維につながっているのですが、この、まとまりが「運動単位(モーターユニット)」というもの。

「一つの運動神経から繋がる筋線維の集団をまとめたもの」

と考えると、運動単位の概念を理解しやすくなるかと思います。

そして、この運動単位は、

どんな時も一つの単位として働く

(引用:新・筋肉まるわかり大事典, p.66)

という特徴を持っており、これが「単位」と呼ばれる所以です。

つまり、運動神経から信号が送られると、そこに繋がる筋線維は「等しく活動する」ことになり、逆の言い方をすれば、同じ運動神経に繋がっている限り、「一部の筋線維が働いて、その他の筋線維が働かない」というのはありえないということになるのです。

よって、同じ筋肉であっても大きな力を出せるかどうかは、筋繊維単位ではなく、筋繊維と運動神経を合わせた運動単位で考えていく、つまり「運動単位をどれだけ働かせられるか」がポイントになってきます。

運動単位のサイズ

運動単位の働きを理解する上で大切なのが「サイズ」。

一つの運動神経につながる筋線維の数は、数本から多いものでは2000本以上とされ、その支配される筋繊維の数によって、小さなものから大きなものまでサイズが決まってきます。

そして、サイズが大きければその分大きな力を出すことが出来、逆に小さければ発揮出来る力は小さくなるのです。

この運動単位は、大きな力を出せる筋肉(例えば背筋群や臀筋群など)には筋線維が数千本も含まれる大きなサイズのものを確認することが出来、逆に細かい動きの調整が必要になる眼球を動かす筋肉では筋線維が数本しか含まれない非常に小さなサイズになるなど、期待される筋力発揮の強さによってサイズが異なってきます。

しかし一方で、同じ筋肉内でも筋線維の種類によってサイズが変わってくるという特徴もあります。

筋線維の種類による運動単位のサイズの違い

瞬間的に大きな力を出す「速筋」と長時間小さな力を出し続ける「遅筋」という言葉を耳にしたことがある人は多いと思います。

(左:遅筋、中央:速筋タイプ2a、右:速筋タイプ2b)

実は「大きな力」と「小さな力」という点からも想像出来る通り、速筋と遅筋によって、含まれる運動単位のサイズは以下のように異なります。

  • 速筋
    • →運動単位のサイズは大きい
  • 遅筋
    • →運動単位のサイズは小さい

つまり、同じ筋肉内であっても、速筋線維の運動単位の方が大きく、遅筋線維の運動単位の方が小さいという違いを見つけることが出来るのです。

サイズの原理とは?

運動単位について説明してきましたが、大きな力を発揮する場合でも、その筋肉に含まれる運動単位全てが、同時に使われるわけではありません。

そこには、運動強度に応じて、

  • 「大きさの小さい運動単位から大きい運動単位へと順次動員される」

という特徴があり、これがつまり筋肉が持つ「サイズの原理」のこと。

力がゼロの状態から徐々に大きな力を出し、最終的に最大筋力に達するというような力発揮では、まず小さな運動単位から使われ、大きな運動単位が徐々に加速していくというのがサイズの原理の基本(一部例外もあります)

(引用:新・筋肉まるわかり大事典, p.67)

であり、筋トレも含めた様々な運動においては、「重要な生理学的な原理」とされています。

小さな運動単位は小さな力を発揮して細かい動きなどを司りながら、疲労にも強い特徴があるのに対して、大きな運動単位は大きな力を発揮して力強い動作に向いている一方で疲労しやすい。

つまり、サイズの原理に従って、小さい運動単位から大きい運動単位が順に動員されることによって、滑らかでコントロールされた動作が可能になる上、動作のエネルギー効率も非常に良くなるのです。

サイズの原理から見る日常生活や筋トレでの運動単位の動員

このサイズの原理を考えた場合、日常生活や筋トレにおける運動単位の動員され方に関しては、次のように言えることになります。

日常生活において

日常生活において人によっては立ち仕事などがあるかと思いますが、多くの場合、筋力を使うと言っても、歩いたり姿勢を正したりといった動作がほとんどになるはずです。

この場合、姿勢を正すために使われる筋肉は主に「抗重力筋(重力に抵抗して姿勢を維持するために絶えず働く筋肉)」と呼ばれ、遅筋の割合が多いのが特徴。

また、動的な動きを起こすといっても、そこで使われる力は最大筋力の20%程度。

そのため、走ったり飛んだり、重たいものを抱えて引っ越し作業をするなどしない限り、日常生活で使われる筋線維は遅筋であり、小さい運動単位の動員が基本になります。

筋トレにおいて

筋肥大や筋力アップを狙う一般的な筋トレでは、高重量を扱うことで大きな力を発揮していく必要がありますが、そこでも基本的にはサイズの原理が働くため、「小さなもの→大きなもの」という順番で運動単位は動員されていきます。

これは、別な言い方をした場合、高重量を挙上する場合でも「遅筋速筋」という流れで筋線維が活性化されていくということであり、後ほど紹介するサイズの原理の例外を応用したテクニックなどを用いない場合は、基本的にサイズの原理が再現されます。

ちなみに、あまりにも軽い負荷(最大筋力の30%程度)で動作を繰り返す場合は、極度に遅筋線維を疲労させない限り、ほぼ遅筋線維しか使われないとされ、筋肉のサイズを大きくするために必要な速筋を刺激したいのであれば、

少なくとも最大筋力の50%以上(65~70%1RM)が必要

(引用:新・筋肉まるわかり大事典

※1RM=最大で挙上可能な重量。65~70%1RMとはその最大挙上可能重量の65~70%という意味

とされ、その程度の筋力発揮を出来ない場合、遅筋を思いきり疲労させないと速筋をいつまでたっても動員出来ず、筋肉の増強には非効率になってしまいます。

サイズの原理の例外

小さな運動単位から始まり、徐々に大きな運動単位が動員されていくのが「サイズの原理」ですが、そこには以下のような例外も存在します。

瞬間的に大きな力を出す場合(バリスティックな力発揮)

大きな力を出すと言ってもそこには、一般的なベンチプレスのように、じっくりと大きな力を出して高重量のバーベルを挙上していく方法もあれば、短距離走のスタードダッシュのように一気に大きな力を出す方法があります。

この二つ目の力発揮はバリスティック(瞬間的に力を発揮して、次に脱力したフェーズがある)と呼ばれ、このバリスティックな力発揮では、サイズの原理が外れるとされています。

これは、瞬間的に力を出す必要があるのに、小さな力しか出せない遅筋線維から大きな力を出せる速筋線維へ徐々に移行していたのでは「効率」が悪いから。

小さな力しか出せない遅筋線維の方が細かい動きの調整に便利であり、エネルギーもそこまで必要とされないため、通常であればサイズの原理を働かせて大きな力を出して行く方が安全面からも効率面からも良くなりますが、瞬間的に大きな力発揮が求められる際には、その点が度外視され、最初から速筋線維が動員されていくのです。

ちなみに、このバリスティックな力発揮で起こるサイズの原理の適用除外を利用したものはバリスティックトレーニングと呼ばれます。

バリスティックトレーニングは、絶対的な筋力を伸ばしたり、筋肉のサイズを大きくする効果はあまりないものの、瞬間的に発揮出来る力を大きくして、実戦で必要な能力を伸ばしていくため、競技によっては有効になってきます。

エキセントリック収縮を起こす場合

エキセントリック収縮とは、筋肉の線維が伸びながらも大きな力を出す収縮様式のことで、主に、ブレーキをかけるような状況で大切になってきます。

(出典:Body Resolution

ジャンプ動作の中で地面に着地する局面や、走行時において前足を地面に着地させる局面などが良い例。

このような局面では大きな力を瞬時に出して体を支えないと、転倒してしまったり関節に大きな負荷が掛かり怪我につながるなどといったリスクが高まります。

そんな状況下にあるにも関わらず、小さな力しか発揮出来ない上に、筋力発揮の速度も遅い遅筋から動員していたのでは間に合わないため、体を守るためにも、大きな力を出せて筋力発揮も速い速筋線維が最初から動員されていくことになるのです。

ちなみに筋トレでは、このエキセントリック収縮を利用したトレーニンネガティブトレーニングと言われる)は筋肥大に効果的だとされ、一つのテクニックとして用いられています。

述べてきたように、筋肥大に大切な速筋線維を最初から動員させられる上、エキセントリック収縮時には、その速筋線維へ微細な傷を与えやすく、その後の回復期において筋タンパク質の合成を活性化しやすくなるとされるのがその理由です。

加圧トレーニングの場合

加圧トレーニングとは、筋肉の根元(血流の出口側/静脈側)にベルトを巻き、血流を抑えてトレーニングしていく方法。

加圧トレーニング

筋肉内に溜まった代謝物が化学的な刺激となり筋肉への負荷を高めていくので、軽い重量で動作を起こしても、筋肉にとっては大きな負荷をかけていけるというもの。

この加圧トレーニングでも、サイズの原理の例外が起こり、速筋が最初から使われていくとされています。

これは、血流を抑えることで、血流と一緒に筋肉内へ運ばれてくる酸素が不足した状態になり、動くためのエネルギーを作る際に酸素を必要としない速筋が、止むを得ず動員されてくるのではないかというのが理由です(参照:石井直方のPhysical Training

今回参考にした本

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サイズの原理と運動単位|筋肉の活動は大きさの順番に左右されている?のまとめ

サイズの原理と運動単位について見てきました。

筋肉が力を出す時に基本となる力の出し方なので、筋肉に関する知識を深めるためにも覚えておくのが良さそうです!

ぴろっきーでした!

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