ウォーミングアップ(ウォームアップ)の効果や方法例を紹介していきます。本番のパフォーマンスを高めるためにもしっかりと抑えておきましょう。
ウォーミングアップ(ウォームアップ)の効果や方法例を確認していきましょう。
本番の運動前に取り入れるウォーミングアップは、とても大切であると耳にすることがあるかと思います。
しかし、そのウォーミングアップの具体的な効果や大切な理由が分からないためか、本番の運動やトレーニング前に十分なウォームアップに取り組んでいないケースも起こりがちです。
では、ウォーミングアップの効果とはどのようなものなのでしょうか?
また、ウォーミングアップを効果的な方法にする場合、どのようなことを考えて組み立てていけば良いのでしょうか?
今回は、筋トレやスポーツなどに大切なウォーミングアップについて、その概要から効果、そしてメニューを組み立てて行く際に抑えておきたいポイントから具体的な例までを紹介していこうと思います。
目次
ウォーミングアップ(ウォームアップ)とは?
ウォーミングアップ(ウォームアップ)は、本番の競技や練習を始める前に行う運動。
スポーツ選手はもとより、筋トレのトレーニー、他にも歌手や舞台の俳優などが、これから筋肉や関節に大きなストレスを与える場面の前に行う準備運動のこと。
一般的にウォーミングアップは、運動の強度を徐々に上げて脈拍を上昇させたり、関節の可動域を広げるエクササイズや、ダイナミックストレッチ(※詳しくは後述)などが含まれ、これらの運動を行うことで身体の準備を整えて急激な運動によるダメージを防ぎ、安全で効率的な運動を行えるようにしていきます。
例えば、ランニングや激しいスプリント競技や練習激を行う前は、ゆっくりとジョギングを行い、心拍数を上昇させて血流を活性化し、体温を高めて筋肉の中の温度(筋温)を上げ、本番で最高のパフォーマンスを発揮出来るように調整しくといった感じです。
そして、ここで重要なウォーミングアップのポイントが「筋温を上げる」という点。
ウォーミングアップ(Warming up:〜を温める)が意味する通り、ウォーミングアップの最大の目的は「温める」ことであり、体が発揮出来るパフォーマンスを高めるためには、体温を温めて筋温を上げることが非常に大切になってくるのです。
次に、ウォーミングアップ(ウォームアップ)の根本的で最大の目的である、激しい運動前に「体を温める」ことがなぜ重要かを簡単に見ていきましょう。
温度依存性によりウォーミングアップは大切
実は人間の体は、体温が高くなればなるほど、体内で起きる化学反応も早くなる「温度依存性」という性質を持っています。
例えば筋収縮を例にとって考えてみた場合、筋肉をミクロレベルで見ていくと、収縮を起こす際にはカルシウムイオンが放出され、それを引き金として、筋肉の最小単位であるサルコメアの中では、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントというタンパク質がお互いに接近するように動いていく(フィラメント滑走説)。
この時、二つのフィラメントの距離が縮まることでサルコメアの距離が短くなり、筋肉全体としても短縮するわけですが、この反応はまさに体内で起こる化学反応の一つ。
ウォーミングアップをすると、体を動かすことでそこで発生するエネルギー消費の半分ぐらいが熱になり、さらに心拍数が高まり血流の循環が増すことで、体温が徐々に上がっていくようになります。
すると筋温も高まり、上で説明したミクロレベルでの化学反応が良くなった結果、より力強く筋肉を収縮させてパワーや瞬発力を発揮していけるってわけ。
例えば、筋温が10度上がると、生体反応の速度は2.5倍程度高まるとされ、逆に39度から30度ぐらいまで下がると、パフォーマンスは半分以下になってしまうとされている(参照:筋肉まるわかり大事典, p.270)。
このように、本番の運動で最高のパフォーマンスを発揮するためには、筋温を高めておくことが重要であり、これがウォーミングアップが大切な最大の理由になります。
ちなみに、温度が高くなればなるほど体内で起きる化学反応も早くなるとしましたが、だからと言って、高くなりすぎるのもNG。
というのも、筋温が41度以上になってしまうと、筋肉のタンパク質は変性して死んでしまうから。
そのため、ちょうど良い筋温として、39度ぐらいが目安とされています(参照:筋肉まるわかり大事典, p.270)。
ただし、体には熱を逃す作用もあるため、通常の運動などを行っても41度以上になることはまずないと思います。
あくまでも特殊な環境な環境下(例えば高熱を出している)での話として、豆知識程度に覚えておきましょう。
ウォーミングアップ(ウォームアップ)が持つその他の効果
ウォーミングアップ(ウォームアップ)は、その最大の目的である体温を高めるという以外に、本番の運動やトレーニング前に行うことで精神的な準備になると信じられていたりと、他にも様々な効果を持っているとされています。
そのウォーミングアップが持つ効果を挙げた場合、以下のようなものが含まれます。
- 心拍数の上昇
- 血中の酸素を、早いスピードで大量に循環させるように活性化する
- 毛細血管の拡張
- 血液の粘性を減少させる
- 筋肉の体温上昇
- 筋肉収縮の強度とスピードの上昇
- 筋線維の伸展性と弾性を高める
- 筋肉の新陳代謝の向上
- 関節の機能向上
- 関節間に存在する滑液の生成を増して摩擦を減少させる
- 体内酵素の活性化
- グリコーゲンの分解によりエネルギーを供給
- 神経興奮伝達のスピード向上
- アドレナリンの放出
- 乳酸の減少
- 肺活量の向上
- 怪我のリスク軽減
- 精神的な準備
この様にウォーミングアップは、体内の化学反応を活性化して運動パフォーマンスを高める以外に、怪我の防止や精神的な準備に役立つなど、直接的な効果だけでなく関節的な効果もあるのです。
本番の運動へ向けて、肉体的にも精神的にも役立つのがウォーミングアップです。
ウォーミングアップ(ウォームアップ)の方法を考える際の指針
ウォーミングアップの概要から大切な理由、そして期待出来る効果までを見てきましたが、実際にウォーミングアップ方法を考える場合は、次の6つの指針を元にしていくのが、効果を高める上でも良いかと思います。
ウォーミングアップ方法の指針① 体温が高まるか
ウォーミングアップの最大の目的が、体温を高めて筋肉中の温度を高めることであるため、ウォーミングアップ方法を考えていく上では、行う運動が十分に体温を高めていくものであるかと意識していくことが大切。
例えば、寒い冬の外気でウォーキングをしたとしても、十分に体を温めることは出来ない可能性が高いため、この場合はもう少しだけ体を激しく動かす運動に取り組んでいき体温を十分に高めていくことが必要になってきます。
逆に、猛暑日のように外気がとても暑い日であれば、本番の運動によっては、少し速めのウォーキングだけでも十分に体温を高められる可能性があります。
ウォーミングアップで最も大切なのは、体温がきちんと上がっているかどうかであるため、この指針を抑えておけば、無意味なウォーミングアップ方法にはならないはずです。
ウォーミングアップ方法の指針② 疲れない程度
ただし、体温を高めるのが目的だと言っても、「疲れない」ように体を温めていくという点も忘れてはダメ。
ウォームアップはあくまでも本番に向けての準備であるわけで、この準備の段階で疲れてしまっては、どんなに筋肉が温めっていようが十分なパフォーマンスを本番で発揮することが出来ません。
そのため、ウォーミングアップの運動は「疲れない程度」というのが、一つの目安となってきます。
ウォーミングアップ方法の指針③ 心拍数を上げる
さらに、ウォーミングアップの方法を考える場合、心拍数を十分に上げるという点も抑えていくのがベスト。
これは、心拍数を高めることで血流が上がり筋肉や関節周りの可動性を高めて運動のパフォーマンスを上げるだけでなく、高重量の筋トレに取り組む場合などは、突然血圧が上昇することで起こる労作性頭痛(偏頭痛の様なズキズキとした痛み)が起こって、トレーニングに集中出来ないといったことを防ぐためにも効果的だから。
ここでも、上に挙げた通り「疲れない程度」に心拍数を上げていくのが良いことを考えると、「軽すぎず疲れない程度の有酸素運動」というのが、一つの目安になってくるかと思います。
ウォーミングアップ方法の指針④ 10分やれば十分
また、ウォーミングアップが十分に体温を高めて疲れない程度のものと考えた場合、基本的には10分間あれば十分。
この時間に関しては、国内の筋生理学の権威でもある石井直方教授も10分で十分だとされています(参照:筋肉まるわかり大事典, p.270)。
その理由は、軽いジョギング程度の運動であっても10分も行えば筋温は39度近くまで上がり、それ以降は一定になるため、10分以上行ってもあまり意味がないというもの。
また、石井教授は、夏場のような外気が暑い状況であればもっと短くても良いとしており、よっぽど寒い環境下でのウォームアップでない限り、基本的には「最大で10分間」を目安にウォーミングアップの方法を考えていけば良いかと思います。
ウォーミングアップ方法の指針⑤ ダイナミックストレッチを少し加える
ウォーミングアップの中に「ストレッチ」を加えることがあるかと思いますが、ウォーミングアップに含むストレッチは、ダイナミックストレッチ(動的ストレッチ)にするのがポイント。
ダイナミックストレッチとは、一般的に「ストレッチ」と言われるスタティックストレッチ(静的ストレッチ)の様に、じっくりと筋肉を伸ばしてその状態を15~30秒程度維持するものではなく、一つまたは複数の関節とそれに紐付いた筋肉群を、広い可動域を取りながらダイナミックな動きで動かしていくエクササイズ。
例えば、もう片方の脚を前後左右に思い切り振っていく動作や、両腕を肩から大きくグルグルと回す動作などが、ダイナミックストレッチに当たります。
ダイナミックストレッチは、対象とする関節と筋肉の柔軟性や可動性、さらに血流などを高め、本番の運動へ向けて体の準備をすることを目的としています。
一方、本番の運動やトレーニング前に、一般的にイメージされるスタティックストレッチをやり過ぎた場合、筋肉が伸び過ぎてしまい、その後の運動で上手く筋力発揮出来なくなる(収縮出来ない)可能性が高まり、ウォーミングアップの時に行うと本番でのパフォーマンス発揮が上手くいかなくなることがあるとされます。
そのため、ウォーミングアップに加えるストレッチは、基本的にダイナミックストレッチを取り入れるのが、忘れたくない目安の一つになってきます。
豆知識として二つのストレッチの特徴をまとめておくと以下の様になります。
- スタティックストレッチ(静的ストレッチ)
- 一般的にイメージされるストレッチ
- 筋肉を伸ばすことが目的で、ケガを予防したり、柔軟性と敏捷性を高めることが出来るとされる
- 一方、長時間やり過ぎると、その後の運動で筋力発揮が低下する可能性がある
- 主に本番の運動終了後の「クールダウン」時に行う
- ダイナミックストレッチ(動的ストレッチ)
- 広い可動域を取って行う簡単なエクササイズ
- 目的とする運動に適した方法で必要な体の部位を動かしていき、関節や筋肉の可動性を高めていく
- 十分な可動域に達するまで動かしていくことで、その後の運動でパフォーマンスを向上させる
ウォーミングアップ方法の指針⑥ 本番の運動に合わせる
そして、ウォーミングアップの中では、本番の動きに合わせた軽い運動(低強度の運動)を行っていくことが、その後のパフォーマンスを最大化するためにも大切。
例えば、ランニングやスプリント競技などの走行動作が含まれる運動に取り組むなら、軽めのジョギングや早歩きをウォーミングアップのメニューに含めておく。
また、本番で高重量のバーベルスクワットに取り組むなら、ウォーミングアップメニューの中では本番直前の運動として、自重で行うスクワットやウェイトプレートを装着していない空のバーベルを担いだバーベルスクワットに取り組んでいく。
このように、ウォーミングアップの中でも最後の方(本番直前)では、本番と同じ又は似た動きを低強度にして加えていくことで、本番で必要な動きのパターンを練習でき、体をいつでも動かせる状態にし、本番へスムーズに移行していけるようになります。
ウォーミングアップ(ウォームアップ)の方法例
ウォーミングアップの方法を考える際に指針としたいポイントを見てきましたが、最後にウォーミングアップの方法として、いくつかの具体例を簡単に挙げていきたいと思います。
本番でランニングを行う場合のウォームアップ方法例
ウォーミングアップエクササイズ | 回数または時間 | セット数 |
ジャンピングジャック | 50回 | 1 |
レッグスイング(両脚を前後左右に可動域目一杯に振る) | 前後左右20回ずつ | 1 |
軽めのジョギングか早歩き | 5~7分 | 1 |
ジャンピングジャックで簡単に心拍数を高めた後、ダイナミックストレッチのレッグスイングを行って股関節の可動性を高め、最後に軽めのジョギングまたは早歩きを行って、本番のランニングに備えていきます。
本番でバーベルスクワットを行う場合のウォームアップ例
ウォーミングアップエクササイズ | 回数または時間 | セット数 |
縄跳び | 3~5分 | 1 |
ジャンピングジャック | 50回 | 1 |
レッグスイング(両脚を前後左右に可動域目一杯に振る) | 前後左右20回ずつ | 1 |
自重のランジ | 左右5回ずつ | 1 |
自重スクワット(または空のバーベルを担いだスクワット) | 20回 | 1 |
縄跳びとジャンピングジャックで十分に心拍数を上げて体を温めたら、ダイナミックストレッチのレッグスイングで股関節の可動性を高めます。
その後、ダイナミックストレッチにもなる自重のランジで、さらに股関節周りの可動性を高めたら、自重のスクワット又は空のバーベルを担いだスクワットを行い、本番のバーベルスクワットの動きへ体を慣らしていきます。
本番でベンチプレスを行う場合のウォームアップ例
ジムでベンチプレスを行うと仮定した場合、ジムにあるランニングマシンで軽めのランニングを行って心拍数や体温を上げていくのもおすすめな方法です。
その後、ベンチプレスで大切な肩周りの可動性を高めるためにも、ダイナミックストレッチとなるアームサークルに取り組んでいきます。
そして、ベンチプレスと同じ肩関節と肘関節の動きを起こす腕立て伏せに取り組んだら、本番と同じ動きを低負荷で行って、本番の高重量のベンチプレスに備えます。
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ウォーミングアップ(ウォームアップ)の効果や方法例|本番でのパフォーマンスアップのためにも!のまとめ
ウォーミングアップ(ウォームアップ)について、その効果や大切な理由、組み立てる際に抑えておきたいポイント、そして具体例を紹介してきました。
本番のトレーニングで発揮出来る力を伸ばすためにも、ウォーミングアップを忘れないようにしましょう!
ぴろっきーでした!